みなさんはどのようにして美術品が美術館等へ運ばれるか、想像したことはありますか?
美術作品にとって「輸送」は非常に高いリスクが伴う行為です。
これは美術品がただ壊れやすいというだけでなく、素材や画材、形状によって適切な輸送・保管方法が異なるためです。
本記事では、どのようにすれば安全に美術品を輸送する事が出来るのか、何に気を付けているのか、美術品輸送の方法やポイントについて解説します。
美術品は引越しのほかに展示会へ出品したり、オークションで落札したりと移動する機会は意外と多いものです。
しかし美術品の輸送は一筋縄ではいかず、
例えば、一般的な引越し業者や配送業者は、美術品や骨董品など輸送・保管に特殊な取り扱いを必要とする物品の輸送を取引約款を理由に拒否することができます。
反対に美術品の取り扱い可能と謳っているものの、通常の貨物と同様の運び方をするケースもあり、加えて有事の際に補償がつかないともなれば目も当てられません。
もちろんコストが抑えられるに越したことはありませんが、こと美術品の輸送においては適切な方法で輸送を行うことができる専門業者、専門サービスに依頼する方が良いでしょう。
美術品の種類や大きさによっても必要な技術や車両、道具は異なります。その会社の実績や保有する車両などを事前に確認してから依頼する会社を選ぶことが大切です。
美術品のような繊細に扱わなければならないものの輸送は事前の確認、計画が肝心となります。作品がどういった構造でできているのか、どのような素材で作られたのか把握してそれに合わせた輸送計画をアレンジメントしなければなりません。
例えば、作品によって脆い箇所があると、その部分には梱包が出来なくなってしまうケースがあります。その場合、土台をしっかり固定し大きな木枠で梱包するなどの対応をする場合もあります。
また、作品本体だけでなく、搬出入先のことも考えなければなりません。
搬出入先の間口の広さはもちろん、わずかな段差にも気を配る必要があります。
厳重に梱包を施すと当然ながら全体のサイズが大きくなるため、梱包後のサイズも見積もって考えます。
作品の特性および具体的な搬出の方法や車積み後の荷締め方法を明確にすることで、当日の段取りを速やかに確実に行うことができます。
一つの美術品に対して、ベストな方法を毎回模索することが重要です。
繰り返しになりますが、美術品は世界にその一点しかないことがほとんどで、可能な限りその価値を保全しなければなりません。
そのためには輸送車両についても通常のトラックではなく、振動を吸収することが出来るエアサスペンションと呼ばれる機能を搭載していたり、温度湿度を管理できる空調を装備していたりする特殊な車両を用います。
武蔵通商株式会社では、積載量が2トンから13トンまでのエアサスペンション搭載車両を複数保有しており、あらゆるケースに対応することが出来ます。
特に2トン車は特注オーダー車(エアサス)となり、これを保有・運用している運送会社は限られています。これにより道路幅の狭い住宅街でも美術品を運ぶことが可能になります。
梱包についても、作品にストレスがかからないように施すことが大切です。また、設置する時のことも考慮して簡単に開梱ができ、安全に輸送できる梱包方法を採用しなければなりません。
絵画等であれば、形状もシンプルなので額縁や装丁に合わせた梱包が比較的簡単に出来るのですが、立体的なオブジェや陶磁器などはそう容易ではありません。
緩衝材の強度が足りなければ、輸送のわずかな衝撃にも耐えられなくなってしまいますが、梱包材を入れすぎても作品に傷がついたり、圧迫されたりして反対に破損するリスクを高めてしまいます。
作品に合わせた梱包設計を行うことが出来る特殊な技術と知識を持ったスタッフが在籍しているかどうかがカギになります。
(※写真は武蔵通商株式会社が保有する美術品専用倉庫)
美術品を展示会やオークションにおいてやり取りする時などに、一時的に保管するケースは少なくありません。
しかし一般的な貨物のように置くスペースがあればいいということはありません。
(1)温度、湿度管理
(2)防塵、遮光対策
(3)耐震、消火設備
(4)セキュリティー対策
など、美術品を保管するためには倉庫自体にも高いスペックが求められます。
作品の最高の状態を保つためには、これまた作品にあった適切な環境が必要です。
一般的に美術品(特に絵画や掛け軸)の保管には温度20度、湿度50度が最適な環境であるとされており、その状態を維持できる空調設備が必要です。
また消火設備においても万が一火事が発生した際には水ではなくハロンガスでの消化を行うなど、作品が水で濡れてしまわないようにします。
武蔵通商では、これらの機能を全て兼ね備えた東京都西地区最大級の美術品専用倉庫にて美術作品の保管を行っています。
ここまでで見ていただいた通り、美術品の取り扱いには豊富な技術や知識が必要になります。
実はこの技能を証明する資格が存在します。
それが公益財団法人日本博物館協会が認定している「美術品梱包輸送技能取得士認定試験」になります。
この資格は、美術品の取り扱い、梱包、輸送について技術水準の向上を図るために2012年に創設されました。
武蔵通商では「美術品梱包輸送技能士」だけでなく「工業包装技能士」や「包装管理士」といった資格保有者が多数在籍し、資格取得の支援をするなど後継の養成にも力を入れています。
美術品はそれぞれの作品の特徴に合わせた輸送計画を立てなければならず、輸送梱包保管のそれぞれの過程で丁寧かつ柔軟な対応が求められます。
美術品を安全確実に輸送するためには、事前にきちんと準備や確認を行うことが重要です。
また適切な設備や技術を保有する専門の業者を見つけることが大切です。